日 時:2017 年 1 月 19 日(木)13 時 30 分~15 時 30 分
場 所: 愛知県医師会館地下健康教育講堂
(名古屋市中区栄4-14-28)
講 演:日本人の頸椎・頸髄正常形態と機能
中部労災病院
院長 加藤文彦
認定単位:5単位((2)-g項目)
会 費:500円
事 務 局 :一般社団法人愛知県労災指定医協会
担当:彦坂 博
〒460-0008 名古屋市中区栄4-14-28
TEL:052-263-0093 FAX:052-263-6775
e-mail:[email protected]
〈抄録〉日本は高齢化社会を迎え、医療に関しても高齢者の増加が様々な変化をもたらしている。脊椎・脊髄領域においても、外傷、慢性疾患、共に高齢者の増加による疾患構成の変化が進んでいる。
日本パラプレジア医学会(現,日本脊髄障害医学会)が1990~1992年に行った疫学調査では、毎年5000人の新たな脊髄損傷が発生し、そのうち75%が頸髄損傷であった。さらに、この3500人の頸髄損傷の中で非骨傷性頸髄損傷は56%であった。そして、脊髄損傷全体の年齢分布は20と59歳の二峰性であった。現在、頸髄損傷は脊髄損傷の80%を占め、さらに非骨傷性頸髄損傷が脊髄損傷の70%を占めるに至った。さらに、高齢者の非骨傷性頸髄損傷が脊髄損傷の60%を占め、脊髄損傷の年齢分布は70歳代の一峰性となった。
非骨傷性頸髄損傷は頸椎部脊柱管狭窄症を基盤として発症するが、同じく頸椎部脊柱管狭窄症基盤として発症する頸椎症性脊髄症も増加中である。このため、当院が所属する独立行政法人・労働者健康安全機構の前組織である独立行政法人・労働者健康福祉機構が行った労災疾病等13分野研究において、日本人の20歳代~70歳代、男女別の頸椎・頸髄正常形態と機能について検討したので、その結果について紹介する。
MRIによる計測にて、脊柱管前後径、硬膜管前後径、脊髄前後径、脊髄面積は年代が高齢となるとともに減少した。これらの変化は椎体高位よりも、加齢変化の影響を受けやすい椎間高位にて目立つ傾向を示した。脊柱管狭窄による無症候性の脊髄圧迫(脊髄扁平化)を3.1%に認めた。たとえ無症状でも、70歳以上の方では約15%の方が、いつ頸椎症性脊髄症や非骨傷性頸髄損傷を発症してもおかしくない頸椎部脊柱管狭窄症となっていた。椎間板変性に関しては、20歳代でもすべての椎間板に変性を認めないということはまれであり、30歳代以上では皆無であった。年齢が高齢になるに従い、椎間板変性は高度となり、変性椎間板数は増加した。また、頸椎の矢状面alignmentに関しては「前弯型」が正常であり、「直線型」・「後弯型」・「S字型」は異常であるとの見解が多い。今回の検討では、若年者では「直線型」・「後弯型」は異常ではなく、むしろ女性では正常かつ多数派であった。しかしながら、50歳以後では従来の見解通り、「前弯型」以外のものは椎間板変性度も高度で、可動域も減少していることが確認された。
頸髄障害の定量的評価法として、小野の「手指10秒テスト」が広く用いられており、20回以下は異常とされてきた。しかし、「手指10秒テスト」の年齢別の正常値を示した報告は過去になかったため、今回これを作成した。結果として、60歳以上では平均値が20回以下であることが示された、。また、「手指10秒テスト」は索路(白質)障害と髄節(灰白質)障害を混在して評価するため、純然たる索路(白質)障害評価法として「10秒足踏みテスト」を考案し、これの年齢別の正常値を作成した。
今回の研究による結果は今後の臨床において、診断のみならず、治療やリハビリテーションの評価において有用と考える。
日本パラプレジア医学会(現,日本脊髄障害医学会)が1990~1992年に行った疫学調査では、毎年5000人の新たな脊髄損傷が発生し、そのうち75%が頸髄損傷であった。さらに、この3500人の頸髄損傷の中で非骨傷性頸髄損傷は56%であった。そして、脊髄損傷全体の年齢分布は20と59歳の二峰性であった。現在、頸髄損傷は脊髄損傷の80%を占め、さらに非骨傷性頸髄損傷が脊髄損傷の70%を占めるに至った。さらに、高齢者の非骨傷性頸髄損傷が脊髄損傷の60%を占め、脊髄損傷の年齢分布は70歳代の一峰性となった。
非骨傷性頸髄損傷は頸椎部脊柱管狭窄症を基盤として発症するが、同じく頸椎部脊柱管狭窄症基盤として発症する頸椎症性脊髄症も増加中である。このため、当院が所属する独立行政法人・労働者健康安全機構の前組織である独立行政法人・労働者健康福祉機構が行った労災疾病等13分野研究において、日本人の20歳代~70歳代、男女別の頸椎・頸髄正常形態と機能について検討したので、その結果について紹介する。
MRIによる計測にて、脊柱管前後径、硬膜管前後径、脊髄前後径、脊髄面積は年代が高齢となるとともに減少した。これらの変化は椎体高位よりも、加齢変化の影響を受けやすい椎間高位にて目立つ傾向を示した。脊柱管狭窄による無症候性の脊髄圧迫(脊髄扁平化)を3.1%に認めた。たとえ無症状でも、70歳以上の方では約15%の方が、いつ頸椎症性脊髄症や非骨傷性頸髄損傷を発症してもおかしくない頸椎部脊柱管狭窄症となっていた。椎間板変性に関しては、20歳代でもすべての椎間板に変性を認めないということはまれであり、30歳代以上では皆無であった。年齢が高齢になるに従い、椎間板変性は高度となり、変性椎間板数は増加した。また、頸椎の矢状面alignmentに関しては「前弯型」が正常であり、「直線型」・「後弯型」・「S字型」は異常であるとの見解が多い。今回の検討では、若年者では「直線型」・「後弯型」は異常ではなく、むしろ女性では正常かつ多数派であった。しかしながら、50歳以後では従来の見解通り、「前弯型」以外のものは椎間板変性度も高度で、可動域も減少していることが確認された。
頸髄障害の定量的評価法として、小野の「手指10秒テスト」が広く用いられており、20回以下は異常とされてきた。しかし、「手指10秒テスト」の年齢別の正常値を示した報告は過去になかったため、今回これを作成した。結果として、60歳以上では平均値が20回以下であることが示された、。また、「手指10秒テスト」は索路(白質)障害と髄節(灰白質)障害を混在して評価するため、純然たる索路(白質)障害評価法として「10秒足踏みテスト」を考案し、これの年齢別の正常値を作成した。
今回の研究による結果は今後の臨床において、診断のみならず、治療やリハビリテーションの評価において有用と考える。
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