日 時:2013 年 6 月 12 日(水)19 時 00 分~21 時 30 分
場 所:八事サーウィンストンホテル(名古屋市昭和区八事本町100-36)
講 演:上肢運動器疾患の診療 そのポイントとピットホール
愛知医科大学医学部整形外科教授
岩堀裕介
認定単位:5単位((2)-g項目)
会 費:1,000円
事 務 局 :名古屋第二赤十字病院整形外科・脊椎脊髄外科
担当:佐藤公治
〒466-8650 名古屋市昭和区妙見町2-9
TEL:052-832-1121 FAX:052-832-1130
e-mail:[email protected]
〈抄録〉私達は整形外科医であり,運動器疾患のプロです.少なくとも内科医・外科医やそのほかの診療科医よりも,運動器全般に精通していなくてはいけません.運動器疾患は広い分野に及び,最近各分野の専門性が高まり,それぞれの診療レベルが格段に向上しています.ところがその反面,運動器外傷やスポーツ障害が軽視される傾向があり,病変の見落とし,外傷手術の若手医師への丸投げ,術後リハビリテーションの後医への丸投げによる予後不良例が散見されます.患者増加による時間的逼迫や医療システムの問題が背景にあるとは言え,それを理由にいい加減な診療が許されるわけはなく,忌々しき事態と思われます. 今回は,上肢の外傷・障害のうち,見逃しやすい病態や診療上留意すべき点について概説したいと思います. 成長期には骨端線が存在し病変かどうか迷うことがあるため,単純X線像は必ず両側を撮影して比較することが重要です.そしてMRIや超音波検査などの画像診断技術が進歩した現在でも,画像所見のみに頼らず,病歴や身体所見(圧痛,疼痛誘発テスト)を入念にとって,画像所見と照らし合わせて診断することが肝要です. 肩関節外傷で見逃されやすい病態としては,肩関節後方脱臼,肩鎖関節脱臼に伴う烏口突起基部骨折,肩甲骨関節窩骨折,上腕骨大結節・小結節骨折,腱板断裂などが代表的です.初診医が見逃すと患者の医療不信を招くほかに治療のために何倍もの時間・費用・労力を要することになります.また,肩鎖関節損傷後には不安定症の遺残のほかに鎖骨遠位端融解症や変形性関節症が二次的に発生することがあり注意が必要です. 小児の肘関節近傍外傷は頻度が高い上に,初期診断・初期治療の誤りが不可逆性の変形治癒や神経障害をまねき機能障害が一生涯続くことがあり,診療上油断できない外傷です. スポーツ選手の肩・肘痛を診療する上で留意すべき点は以下の三つあります.①腋窩神経障害,肩甲上神経障害,肘部管症候群,胸郭出口症候群(腕神経叢過敏)などの神経障害が関与する場合があり,これらの病態を念頭に置く.②小・中学生の野球選手の肘痛症例では,単純X線像は必ず両側のtangential viewを撮影し,上腕骨内側上顆下端裂離や小頭離断性骨軟骨炎の所見を見落さない.③単なるオーバーユースによる局所だけの問題ではなく,全身的なコンディショニング不良や不良な動作が関与していることがほとんどであり,治療では下肢・体幹のリコンディショニングや動作指導、リハビリテーションも行う. 以上の点に留意して正しい初期診断の元に適切な治療選択を行い,上肢機能障害を回避することが運動器疾患のプロである私達の役割です.そして多くの患者をこなすことよりも質の高い医療を提供することを優先する姿勢を持ち続けていただきたい.
コメント